南行徳・浦安駅徒歩圏内、市川・浦安・江戸川区で活動する税理士、島田竜一です。
前回は個人事業主の確定申告の「青色申告と白色申告の違い」について解説しました。
今回は、確定申告する事業所得を計算するための決算書の作り方について解説していきます。
決算書とは?
個人事業主にとっての決算書とは1年間(1月1日〜12月31日)における売上や経費などの合計額、資産や負債などの残高をまとめたものです。
具体的には以下の2つの書類です。
- 損益計算書(白色申告の場合は収支内訳書)
- 貸借対照表
損益計算書は、売上や必要経費などの1年間の合計額をまとめて「売上ー必要経費=利益」を計算するための書類です。
これがなくては所得(いくら儲かったのか、または損したのか)がわからないため確定申告ができません。
そのため単式簿記・複式簿記いずれで記帳していても、全ての個人事業主が作成しなければならない書類となります。
貸借対照表は、資産や負債などの12月31日時点の残高をまとめた書類です。
複式簿記で記帳することにより作成します。
青色申告特別控除65万円の適用を受けるためには、複式簿記により記帳し、この貸借対照表の作成が必要になります。
決算書作成の流れ
決算書を作成するまでの大まかな作業の流れは以下の通りです。
- その年中の記帳にミスが無いかチェック
- 棚卸を行い在庫等を集計
- 減価償却費の計算
- 売掛金・買掛金の集計等のその他決算整理
まず、1.については期中取引に係る領収書・請求書等と記帳内容を突き合わせて、金額の間違いや記帳漏れがないかチェックしていきます。
2.以下については、個別に詳しく解説していきます。
棚卸資産を集計
棚卸は卸売業や小売業・飲食店業など在庫を抱える業種の場合に特に重要になる作業です。
何のためにやるのか?
年末在庫がいくらになるのかを計算し、それを経費から除くために行います。
例えば小売業を営む個人事業主が、年末に大量の商品仕入を行ったとします。
それがそのまま年内は売れずに倉庫に残っています。
この状態は、現金という資産が商品という資産に変わっただけで損益は発生していません。
ただ、記帳上はまず商品を仕入れた時点で「仕入」という経費をいったん計上します。
その上で、年末に仕入れたけれどそのまま残っている商品を「棚卸資産」として経費から差し引くのです。
こうすることで、結果として1年間に仕入れた商品のうち売れた分に対応する商品だけが「仕入」として経費計上されることになります。
この棚卸資産の処理があるため、「今年は利益が多くなっちゃったから年末に大量に仕入れをして節税しよう」という方法は通用しません。
年末に大量に仕入れても、それが12月31日時点で残っていれば、その残っている分はその年の経費にならないからです。
棚卸資産の評価方法にはいくつかの方法がありますが、特に届出を行っていなければ最終仕入原価法によることになります。
これは、同じ商品で商品の種類ごとに「最終の仕入価格×在庫数量」で年末時点の棚卸資産を評価する方法です。
なお、棚卸資産は商品だけでなく、消耗品等(事務用消耗品や梱包資材、広告宣伝用物品等)の在庫についても貯蔵品として、その年の経費にはできないケースもありますので注意が必要です。
減価償却費の計算
減価償却は、それだけで分厚い書籍が多数出版されているほどややこしいものです。
ですので、ここでは概要だけ。
減価償却における最重要ポイントは以下の2点です。
- そもそも減価償却資産として資産計上すべきものかの判断(計上金額の判断含む)
- 耐用年数は何年なのか?
まずはその年中に買ったもののうち、減価償却資産として資産計上すべきものをピックアップします。
基準は、1年以上使用でき、10万円以上のもの。
これに引っかかるものは、「原則としては」買った年に一発で経費に落とすことはできず、減価償却をして耐用年数で少しずつ経費化していくことになります。
ただし、金額によって特殊な取扱いをするものがあります。
まず、10万円以上20万円未満のものは、一括償却資産としてその資産の耐用年数にかかわらず3年で均等償却をすることができます。
次に、10万円以上30万円未満のものは、年間合計300万円分までならその年に一発で経費にすることができます。(青色申告をする中小企業者(従業員1,000人以下)に限られます。「中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の 特例制度」)
30万円以上の減価償却資産は、原則通り減価償却をしていきます。
耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令で定められており、この省令のリンクの最後の方に各減価償却資産の耐用年数表が記載されています。
減価償却の方法としては定額法・定率法とありますが、特に届出をしていない個人事業主は定額法を採用することになります。
定額法とは耐用年数の間、均等に減価償却費を計上していく方法です。
一方、定率法は残存価額に一定率を乗じて計算しますので、初期に多めに償却され、年数が経つ毎に償却費が小さくなっていきます。
その他の決算整理
その他の決算整理として主なものは、年をまたぐ取引についての調整です。
- 売った・買った(サービスの提供等を含む)けど、代金はまだ→売掛金・買掛金・未収金・未払金等
- サービスを受けたけどまだ代金は払ってない、もしくはまだ受けてないけど代金は先に払った→未払費用・前払費用等
収入・経費については原則として発生主義で処理する必要があるため、代金決済のタイミングに関係無く、その収入・経費が発生した時(イメージ的には、領収書のタイミングではなく請求書のタイミングということ)に計上されることとなります。
よって、キャッシュの動きと発生のタイミングが年をまたいでズレる取引については、発生の年で認識されるように整理しなければならないのです。
決算書の作成
以上の作業を経て、1年分の収入・経費をまとめて損益計算書を作成します。
(65万円控除を受ける場合には、貸借対照表も必要)
結局、棚卸・減価償却その他の決算整理という作業は、その年のキャッシュの出入をそのまま収入・経費としたのでは合理的な損益とはいえないので、一定のルールに沿って不合理が生じる部分を調整するものといえます。
※本記事は、記載時点の法令等に基づいています。
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