92fb1aa9ac6a380fc88a98747c89c5d9_s市川市・船橋市・松戸市エリアの税理士、島田竜一です。

今回は会社設立関連の記事の第1弾として、「会社設立 or 個人事業主」を考えてみたいと思います。
会社設立の記事なのに、いきなり「会社を設立しない(個人事業主)」という選択肢があるわけですが、ここでの選択はとても重要です。
法人形態と個人形態にはそれぞれメリット・デメリットがあり、個々の状況に応じて適した形態は変わってきます。
「起業=会社設立」と決めずに、慎重に検討する必要があるのです。

以下、法人・個人それぞれのメリット・デメリットです。

※掲載日時点の法令・情報等に基づき記載しておりますのでご留意下さい。

会社設立(法人)のメリット・デメリット

メリット

  1. 税率が基本的に一定
    累進課税のため所得が増えるほど税率が上がっていく所得税に対し、法人税の税率は基本的に一定です。さらに今後は法人税率の引き下げが検討されています。そのため一定以上の所得が見込まれる場合には、会社を設立し法人形態にした方が有利になります。
  2. 役員報酬を損金計上
    社長に役員報酬を支払い、それを損金計上することができます。その役員報酬は給与所得となりますが、ここで給与所得控除を受けることができるため、個人事業主が同じ所得を事業所得として得るのに比べて有利になります。
  3. 節税策がとりやすい
    生命保険の活用や、自分や家族に対して退職金を支払うなど様々な節税策をとることができます。
    また社長に相続が発生した際、法人の資産は社長保有の株式として評価されますが、個人事業主の場合には事業資産がそのまま社長個人の資産として評価されます。基本的には株式として評価された方が評価は低くなりますので、相続・事業承継上も法人形態の方が有利になります。
  4. 赤字の繰越が長い
    ある事業年度で発生した損失を、その後の利益から控除することができるのが欠損金の繰越控除です。法人はこれを9年間繰り越すことができます(個人事業主は3年)。
  5. 社会的信用が高い
    「個人事業主とは取引しない」という企業もあるため、このような方針の取引先がある場合には、必然的に法人形態をとることになります。
    設立にあたって資本金1,000万円を用意するハードルが無い現在では、実質的には「登記をしている」ということ以外に法人が個人事業主より高い信用を得る要素は薄いように思いますが、一般的なイメージとしてはやはり法人の方が社会的信用は高くなっています。

デメリット

  1. 設立に費用がかかる
    定款の作成・認証や登記などを自分で行ったとしても、最低でも20万円程度の費用がかかります。
  2. 社会保険が強制適用される
    法人は社長1人であっても原則として社会保険に加入しなければなりません。ただし厚生年金に入っていれば年金が多くなりますし、社員を雇う場合にも待遇面で優秀な人材を確保しやすいなど、必ずしも社会保険加入がデメリットとは言えません。
    しかし設立したばかりの会社にとっては、社会保険料コストの負担もバカにならないのも事実です。
  3. 赤字でも均等割は課税される
    法人は赤字でも法人住民税の均等割(例えば千葉県市川市の場合、最低でも千葉県分2万円と市川市分5万円の年間7万円)は課税されます。

個人事業主のメリット・デメリット

法人のメリット・デメリットの裏表になります。

設立費用もかからず、税務署に開業届等を提出すれば簡単に開始できます。
従業員5人未満であれば社会保険に加入しなくてもよいですし、赤字でも課税されるような均等割もありません。
このあたりがメリット。

一方で、節税策が限られたり、社会的信用が法人に比べると低いなどのデメリットがあります。

まとめ

起業の際、事業を会社(法人)にするか、個人にするか?

まず最初に考えるのは、取引先です。
取引先が法人でないと取引してくれない、もしくは法人の方が信用度が上がるため業績にプラス(売上げが伸びる等)に働くことが見込まれるのであれば、基本的に会社設立でよいと思います。

営業上いずれでも特に影響が無く、起業当初は事業規模が小さいという場合には、個人事業主としてスタートして事業規模が一定以上になってから法人成りするという方法があります。
コストをあまりかけずに事業をスタートできますし、所得が小さければ税率も所得税の方が有利になります。
さらに、個人・法人ともに原則として事業開始から約2年間は消費税が免税となりますが、個人事業主から法人成りすればこの免税期間を両取りでき、最大約4年間の免税期間となります。

 

※本記事は、記載時点の法令等に基づいています。

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