ba9b03b1e8f770c05a974abd88c19964_s代表税理士の島田竜一です。

今回は、会社設立シリーズ第10弾として「法人成りの場合の消費税納税義務」について解説していきたいと思います。
個人事業主から法人になった場合に、法人の消費税納税義務判定に個人事業主時代の課税売上高は関係あるのでしょうか?

※掲載日時点の法令・情報等に基づき記載しておりますのでご留意下さい。

消費税の納税義務の基本

消費税の納税義務者は、個人事業主や法人です。(外国貨物を保税地域から引き取る者もありますが、省略します。)
非課税取引を除き、事業として行った資産の譲渡や貸付け、役務の提供について消費税の納税義務を負うことになっています。

つまり会社を設立して事業を行えば、原則として全て納税義務を負うことになるのですが、一定の納税義務免除規定があります。

消費税には免税点が設けられており、基準期間(個人事業主の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除されます。
ただし、平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間(※)における課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。
※特定期間とは、個人事業主の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。

新たに設立された法人については、設立当初の2年間は基準期間が存在しないことから、原則として免税事業者となります。
ただし、その事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人の場合、その基準期間のない事業年度については、納税義務は免除されません。
つまり、資本金を1,000万未満に抑えることが消費税の納税義務免除にとって重要なポイントになります。

法人成りした場合の消費税納税義務はどうなるの?

消費税の納税義務の判定は、事業者単位で行います。
よって、個人事業主が会社設立による法人成りをしてその事業内容が同一であっても、個人事業主と会社は違う事業者ですから納税義務判定も別々に行うことになります。

法人成りした初年度の前々年の個人事業主の課税売上高が1,000万円を超えていたとしても、それは設立された会社には何の関係も無く、会社は会社で新設法人として消費税の納税義務が判定されるわけです。

例えば個人事業主として約2年間消費税の免税事業者として事業を行い、その後に資本金1,000万円未満で会社を設立してさらに約2年間消費税の免税事業者になるということができます。
原則として消費税納税額は課税売上高から課税仕入れを控除して計算されるため、課税売上高が大きく、課税仕入れが小さいほど節税効果は高くなります。
(逆に免税期間の課税仕入れが課税売上高を超えることが想定される場合には、あえて免税を放棄し課税事業者を選択するという方法もあります。)

消費税の税率が8%から10%になると単純に消費税納税額が増えるため、さらにこの節税策の効果が高まることになりますので、起業の際には慎重な検討が必要です。

 

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