6ecae5444f34486c127ab811b2fc3e99_s南行徳・浦安駅徒歩圏内、市川・浦安・江戸川区で活動する税理士、島田竜一です。

今回は、会社設立シリーズ第4弾として「税金に関する届出」について解説していきます。
ケースによっては、提出の有無で税金の損得が変わってくることもありますので、慎重な検討が必要です。

必ず提出しなければいけない書類

法人設立届出書

法人が設立されたことを国・都道府県・市町村にそれぞれ届出るための書類です。
提出期限は以下の通り。

【所轄税務署】設立から2ヶ月以内

【所轄都道府県税事務所】設立から1ヶ月以内(東京23区内は事業開始から15日以内)

【各市町村】設立から2ヶ月以内(東京23区内は不要)

【書類見本】

法人設立届出書(税務署)

法人の設立等報告書(千葉県の例)

法人届出書(市川市の例)

提出するケースが多い書類

青色申告の承認申請書

法令上、必須の書類ではないためこちらのカテゴリーに入れていますが、実務上はほぼ必須と言っていい書類です。
多くのケースで税金の損得に直結する最重要書類です。
青色申告であれば、赤字が翌年以降に繰り越せたり、税務上の各種特例計算の適用を受けられたりと様々な特典があります。
税金を少しでも安く抑えたいのであれば、必ず提出しておくことをオススメします。

提出期限は、設立から3ヶ月以内です。
ただし、その前に設立1期目が終了する場合には、その終了の日が提出期限になります。

設立1期目は何かと費用がかさんで赤字になってしまうケースも多いと思います。
そんな設立1期目の赤字を2期目以降の黒字と相殺するためには、この青色申告の承認申請書を上記提出期限までに提出しておく必要があるのです。

【書類見本】

青色申告の承認申請書

給与支払事務所等の開設届出書

給与等を支払う場合に提出する書類です。
社長1人だけの会社であっても、社長に給与(役員報酬)を支払うのであれば、この書類の提出が必要となりますので、実務上はこちらもほとんどのケースで提出することになります。

提出期限は、給与支払事務所等の開設(給与計算期間の開始)から1ヶ月以内です。

【書類見本】

給与支払事務所等の開設届出書

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

名前の通り、「納期の特例」に関する書類なので、税金が安くなるものではありません。
しかし、手間が楽になります

給与等を支払う際に源泉徴収した所得税は、原則として翌月10日までに納付しなければなりません。
つまり、毎月納付手続の手間があるわけです。
しかしこの「納期の特例」の適用を受ければ、7月と1月の年2回でそれぞれ半年分をまとめることができます。
手間が減って、納付も少し後回しにできるというメリットだけなので、こちらの書類も必ず提出しておきたいところです。

ただし、この特例を受けられるのは「給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者」に限られますので、給与支給人員が10人以上の場合には残念ながら原則通り毎月納付となります。

提出期限は、納期の特例の適用を受けたい月の初日の前日までです。
原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されることとなります。

【書類見本】

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

ケースによっては、提出する書類

消費税課税事業者選択届出書

資本金1千万円未満で設立すれば、基本的には設立1期目と2期目は免税事業者となり消費税の申告・納付をする必要がありません。
しかし、あえて課税事業者になる場合に提出するのがこの書類です。
何のために?
消費税の還付を受けるためです。

設立1期目・2期目に課税売上げを上回る課税仕入れ(設備投資等)が見込まれ、消費税の還付が受けられるケースに提出を検討します。

還付が受けられるなら無条件に提出したくなるところですが、「提出を検討」と書いたのは注意点があるからです。
この書類により課税事業者を選択すると、2年間は強制的に課税事業者となります。
つまり、還付を受けられる事業年度だけ課税事業者を選択するということは認められませんので、2年間通算で損得を考える必要があるのです。
例えば1期目で50万円の還付を受けられても、原則では免税事業者だったはずの2期目も課税事業者となり100万円の納付が生じたのでは意味がありません。

提出時期については、原則として提出した事業年度の翌事業年度から適用となります。
しかし、新規に設立した法人の1期目については、1期目終了の日までに提出すれば適用を受けることができます。

【書類見本】

消費税課税事業者選択届出書

消費税簡易課税制度選択届出書

資本金が1千万円以上である等の設立1期目から消費税の納税義務がある場合に検討する書類です。
原則課税と簡易課税それぞれの納税額がシミュレーションしてみて有利不利を慎重に検討する必要があります。
こちらも上記の消費税課税事業者選択届出書と同様に2年間は強制的に簡易課税計算となりますので、2年間通算でのシミュレーションをします。

提出時期については、原則として提出した事業年度の翌事業年度から適用となります。
しかし、新規に設立した法人の1期目については、1期目終了の日までに提出すれば適用を受けることができます。

【書類見本】

消費税簡易課税制度選択届出書

減価償却資産の償却方法の届出書

実務上、提出することはほとんどありません。
建物・無形減価償却資産以外の減価償却資産について、定率法でなく定額法を選択したい時に提出します。
定額法に比べて定率法の方が初期償却が大きくなるため(最終的な償却額の累計は同じ)、あえて定額法を選択する理由はあまりありません。

提出期限は、新規設立であれば1期目の申告書提出期限までです。

【書類見本】

減価償却資産の償却方法の届出書

棚卸資産の評価方法の届出書

こちらも実務上、提出することはほとんどありません。
棚卸資産の評価方法について最終仕入原価法以外の方法(個別法、総平均法、低価法)を採用したい場合に提出します。
最終仕入原価法以外の方法は手間がかかりますし、翌期との通算で考えれば税金への影響も無くなってしまうことから、基本的には最終仕入原価法のままでよいと思います。

【書類見本】

棚卸資産の評価方法の届出書

※本記事は記載時点の法令等に基づいています。

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