代表税理士の島田竜一です。
今回は、会社設立シリーズ第9弾として「役員報酬の決め方」について解説していきたいと思います。
※掲載日時点の法令・情報等に基づき記載しておりますのでご留意下さい。
自由に決めちゃいけないの?
家族だけで役員となっているようなオーナー会社を前提としますと、社長が自分で決めることができます。
しかし、役員報酬を完全に自由に支払うことができるようにしてしまうと、会社の利益を簡単に操作することができてしまうため、税務上は一定の制限が設けられています。
役員報酬の変更は年1回
税務上、役員報酬を会社の経費(損金)にするためには定期同額給与に該当する必要があります。(その他、事前確定届出給与や利益連動給与がありますが一般的でないので省略します。)
定期同額給与とは簡単に言えば「1年間毎月同額の役員報酬」ということです。
変更できるのは、新しい事業年度が開始してから3ヶ月以内で、この間にその事業年度の業績を予測して役員報酬を決めることになります。
つまり、事業年度終盤になって業績の結果が見えたところで「利益が出そうだから役員報酬を増やそうか」などといった調整はできないようになっているのです。
ただし、以下の場合にはタイミングに関わらず役員報酬を変更することができます。
- 役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更があった場合
- 業績が著しく悪化したこと等によりやむを得ず減額する場合
過大な役員報酬に注意
上記の定期同額給与に該当していれば、いくらであっても役員報酬が会社の損金になるかというと、そうではありません。
税務上は、その役員の職務内容・会社業績・類似法人の役員報酬相場などから考えて、不相当に高額な役員報酬は損金不算入(会社の経費にならない)として取り扱われます。
特に注意したいのが社長の家族に対する役員報酬。
まだ学生の子供であったり、他の企業に勤務している親族などに対して高額な報酬を支払うというのは、職務内容相当であると説明するのは非常に難しくなります。
税務調査でも必ずチェックされるポイントですので、注意が必要です。
会社に残すか、報酬でもらうか
最もシンプルな例として社長だけの一人会社(株主も社長一人)であった場合、会社が稼得した収益を会社に残そうが役員報酬でもらおうが「社長のもの」であることに変わりはありません。
ただし、税金計算上は会社の収益には法人税等、個人の役員報酬には所得税等が課税され、税率も変わってきますのでどのようなバランスとするか慎重な検討が必要です。
まず基本的なところでは、「会社が稼得した利益残額以上に役員報酬をとらない」ということでしょうか。
利益以上に役員報酬をとるというのは、つまり自分で入れた資本金から支払っていることになってしまいます。
税率については法人税が固定(2段階はありますが)、所得税は累進課税(所得が高くなるほど税率が上がる)となっており、所得が低いうちは法人税率の方が高いですが、所得が高くなっていくと所得税率が逆転します。
役員報酬としてもらうと税務上有利な点としては、給与所得控除があります。
給与所得控除は、所得税の給与所得計算上で「経費」のように控除できるものであり、会社と社長を一体として考えると、役員報酬でもらう形にした方がこの給与所得控除の分だけ「経費」が増えることになり税金計算上で有利になります。
上記の様に、役員報酬とすれば給与所得控除の分だけ有利になりますが、一方で役員報酬が高くなると所得税率がどんどん上がっていきます。
また税金以前の問題として、会社が稼得した利益を常に役員報酬で全てとってしまっていては、会社が投資をして事業を発展させていくことができません。(社長から貸付を行うという方法もありますが。)
以上、役員報酬の決め方のルールや考え方をみてきましたが、全てのケースに当てはまる一つの正解があるものではありません。
同じ会社でも1年ごとに適正な役員報酬は変わっていきますので、会社設立当初だけでなく常に検討していくことが大切です。
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